2026年1月1日、プロレスリングWAVEのリングで、宮崎有妃が2度目となる引退を迎えようとしている。類稀なハードコアセンスとユニークなキャラクターでファンを魅了してきた彼女は、なぜ再び引退という道を選んだのか。前編では引退の理由、レスラーとしての理想像との葛藤、レジーナ王者としてWAVEのトップに君臨した1年、上谷沙弥とのレジーナ戦。そして後輩たちに託した想いまで、彼女のプロレス人生を深く掘り下げたインタビューを前後編でお届けします。(取材・文/大楽聡詞 文中敬称略)
プロレスラーとしての理想像との葛藤
――引退を決断された理由についてお聞かせください。
宮崎:大きい怪我をしたわけではないんです。でも、小さな怪我はたくさん抱えていて。自分の中で「自分の思い描くプロレスができなくなった」というのが一番の理由です。
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――宮崎さんは2010年にNEO女子プロレスの解散と共に引退。2015年7月に現役復帰されました。
宮崎:そうですね。2010年はケガしての引退したわけではなかったので、2015年復帰した時も自分の体を思うように動かせたと思います。
復帰してから自分の意思で体を大きくしました。昔の女子プロレス界には、イーグル沢井選手のような体の大きい選手がたくさんいらっしゃいました。
若い頃の私は、そういった選手にどう立ち向かうかを経験してきた。でも今の時代、昔に比べて大きい選手が少ないなと感じました。「それなら私がなろう」と思って、どんどん体を大きくしたんです。
でも体への負担はとても大きくて、体が自分の思い通りに動かなくなってきました。試合が終わるたびに「ごめんね」とお客さんや対戦相手に思うことが多くなってきて。これは良くないな、と思ったんです。
――プロレスラーとして自分自身の動きに納得がいかなくなったということでしょうか?
宮崎:そうですね。それに加えて首の状態も悪化して、左と右の視線がそれぞれ違う方向を向いている「斜視」になってしまいました。
私の場合、ロープが何本にも見えたり、相手との遠近感がつかめなかったり、まともに試合ができなくなりました。
――具体的には、いつ頃からそのような症状が出始めたのですか?
宮崎:1年ちょっと前ぐらいですね。ムーンサルトプレスを出そうとしてコーナーの二段目に上がった時、後ろ向きの態勢のままにリングに倒されたことがあって。その時からものが重なるように見えるように。「時間が経てば治るだろう」と思っていたら、そのまま症状が進行してしまいました。
