
プロキックボクサー寺山遼冴の半生を紐解くインタビュー中編。幼少期に培われた「見れば真似できる」天才肌の運動神経。その才能を格闘技の世界で開花させ、アマチュアで数々のタイトルを獲得。しかし、プロの舞台は彼の想像とは異なり、期待と現実のギャップに直面する。憧れの那須川天心の背中を追いながらも、彼は自分自身の「強さ」を問い直し始める。若き格闘家が辿り着いた、真の強さへの探求とは。(取材・編集/大楽聡詞 文/藤本桃子)
京谷祐希との試合で一皮向けて、優勝へ
ーー寺山選手がプロデビューしたのは2019年11月。宮川凌選手に判定勝ち。初めてプロとしてリングに立った時、アマチュアでベルトを獲った時とは見えた景色は違いましたか?
寺山:なんだろう…。勝って嬉しいはずなんですけど、リングから見た後楽園ホールに、「こんなもんなんだな」と思ってしまったんですよね…。
ーー後楽園ホールは「格闘技の殿堂」ですが…。
寺山:もちろん後楽園ホールが、「格闘技の殿堂」と呼ばれ、沢山の名勝負が生まれたことは知っています。
ただ子供の頃から、横浜アリーナや埼玉スーパーアリーナなど大きな会場での試合を観てきたので、そのイメージと後楽園ホールのキャパシティに対してギャップがあったと思います。
でも、17歳のときに初めて出場したRIZINは、今まで試合した中で1番会場が大きかった。勝って会場をパっと見た時に「うわ、すげえ!」と思いました。
沖縄の会場でしたが、本当にたくさんのお客さんの視線を感じた。「これだよ、これ!」と興奮しました。
それに後楽園は選手と観客席が近いので、見られているとめちゃくちゃ緊張するんです(苦笑)。入場の時も、応援してくれる人の顔がよく見える。
でも大きい舞台はお客さんの顔が見えないので緊張することがありません。それに演出もすごいんですよ。ですから非現実の世界というか、自分にしか光が当たっていない空間がめちゃくちゃ気持ち良かったですね。