引退後に感じた「生涯スポーツ」の真価と、次なる挑戦
世界最高峰の舞台を知るレジェンドは、引退後もなお競技の世界に身を置き続けている。
現在の国枝は、車いすテニス界の若手育成やコーチングに力を注ぐ一方、新たな挑戦も始めていた。
「今年度から車いすバスケも始めたので、ちょうど来月試合があるので、そちらも出ながらの活動です」
ひとつの競技で世界を極めた男が、また新たな競技に身を投じる。その原動力は何なのか。国枝が口にしたのは、シンプルな言葉だった。
「やっぱりスポーツは楽しいっていうところがまず一番に来ますね」
その言葉には、勝利や記録を追い求めてきたトップアスリートだからこそたどり着いた本質が詰まっていた。
「僕自身テニスは引退していますけど、テニスをやっていて何が良かったかなって考えると、今でも好きなんですよ。選手を辞めた今となっては、最強の趣味でもあるわけですよね」
競技生活を終えたからこそ見えてきたスポーツの価値。それは“生涯にわたって楽しめるもの”として人生に残り続けることだった。
「人生の楽しみって何だろうって考えた時に、好きなことを10個挙げるのって意外と難しい。でもその時に一番最初にテニスっていう言葉が出てくる。それだけでもやってきた意味があるのではないかと思うんです。
例えば子どもの時にスポーツをやっていて、大学卒業ぐらいで辞めた人でも、またいつでも再開できる。しかもある程度上手い状態で戻れる。そういうところもスポーツのいいところだなって、引退してからすごく思いますね」
競技を通じて得た経験や身体感覚は、時間が経っても失われない。それは人生を豊かにする“財産”として積み重なっていく。そして、その考え方は新たな挑戦にもつながっていた。
「バスケットを始めて思うんですけど、スポーツで上手くなるためのやり方って結構共通しているんですよね。言語化して、それを反復していく。そういうプロセスも含めてすごく楽しめる」
世界を極めても学び続け、競技を変えても成長を楽しむ。その姿勢こそ、国枝氏が歩み続ける“挑戦者”としての現在地だった。
