ゴルフのスキルアップのコーチではなく、人生に生きる思考を、ゴルフを通して伝える教育者のように見える
◼️どん底からの復活。そして「不死身のゾンビ」へ
――1998年に優勝された後も、体調不良は解決していなかったのですか?
中嶋:そうですね、お礼は言えてよかったのですが、特に何も解決していないので厳しい状況は続きました。優勝した翌年はシード権があるので良いのですが、その翌シーズンのシード権は失いました。
その時、「さすがにもう限界だ」と引退が頭をよぎりました。
でも私、意外と往生際が悪いんです。ちょうどその頃、ある出会いをきっかけに、自分と深く向き合う時間を持つことになりました。
――その出会いが、ゴルフ人生を変えたのですね。
中嶋:もう限界とエネルギーを失っていた時に、捨てても、捨ててもまたゴミ箱から拾ってしまうチラシがありました。それが能力開発の第一人者である西田文郎先生。ダメ元と思い、電話してすぐに静岡に向かいました。
その先生は、諭すでもなくニコニコと質問をしてくださいました。これまで人に弱みを話したことのなかった私は、初めて自分のすべての状態を話しました。あんなに涙は出るものかというくらい流れて、肩の力が抜けました。そして質問に答えているうちに「あれっ?」と気づきがある感覚でした。その中の一つは、自分のエネルギー源は夢だったのに、現実に振り回されて、夢をすっかり忘れていたこと。これはとても重要でした。
もうひとつ、先生に「ギリギリできるレベルだから悩むんだよ」と言われて、「えっ?出来るの?」と自分に言ってる自分に気づき「ということは出来ないと心の奥底では思ってるんじゃないの?」と自ら問いました。
「そうだ!出来る!」と100%以上思っていた時、物事が上手く運んでいた。「少しでも疑っているんじゃ出来るわけがない」と気づき、「あの時のように出来ると思いきれたらいいんだ」と思った瞬間にブレーカーがバーンと上がったような感覚になりました。初めてゴルフクラブを持った日に「もうプロになっている感覚」があったように。人から見たらおかしな人かもしれないけれど、これが私の強み、これを使わないでいたなんて!帰路についた時には「できる!」と晴れやかな気分でした。
<#5に続く>
編集/まるスポ編集部
プロフィール
プロゴルファー中嶋千尋(なかじま ちひろ)
優勝4回・ 日本プロスポーツ新人賞受賞・ 米ツアー参戦・ ベストスコア63
日本女子プロゴルフ協会公認ドライビングコンテスト優勝(272Y)
東京都出身。PL学園高校を卒業後、1985年にプロテストに合格。1988年には「ダンロップレディスオープンゴルフ」でツアー初優勝。翌年にはアメリカツアーに挑戦。帰国後、原因不明の首、背中、腰痛に苦しみ、以降長らく芳しい成績を残せなかった。1998年、「健勝苑レディス・道後」で約10年ぶりの優勝。2002年には2勝で通算4勝。2004年には「ミズノクラシックレディス」で“63”という自己ベストスコアを40歳で更新、2006年21年間のツアー生活に区切りをつける。その後、デザイナー、講演、企業研修なども手掛ける。現在は人生観も詰まっている「MOVE GOLF ACADEMY」にて、トッププロ育成と大人の可能性も引き出す指導に力を入れている。これまでの常識を刷新するMOVE理論で能力開花する人が続出。上手くなるだけではない人間力アップにも力を入れている。座右の銘は「愛情は平和のもと」
