ゴルフのスキルアップのコーチではなく、人生に生きる思考を、ゴルフを通して伝える教育者のように見える
――井戸から空を見上げるような状況でしょうか?
中嶋:見たこともない絵面だったので、スタジオでも「これはどこでしょうか?どうなっているんでしょうか?」といった会話になっていたと聞きました(苦笑)。とにかく元のホールに戻るのはスーパーマンでも無理です。「どうしようかな」とキョロキョロと全方向見ながら考えていたら、狭いけど隣のホールを逆走することは出来なくはなさそう、グリーンに近づけば3打目は高低差が減るから、ウエッジで上げられるだろうと思い、そのルートを選択しました。
3打目も高低差の大きい林越えでしたが、距離も測れないので勘で打ちました。大きな拍手でグリーンに乗ったことがわかりました。危機を最小限で回避できたのは、若い頃に飛ぶけれど曲がるという経験をたくさんしていたおかげです。
15番ホールで1打追いかける立場になり、16番ホールでトップタイに並びました。17番で長いバーディパットが決まって一歩抜け出し、最終18番ホールへ。パーで優勝という場面で、気持ちよくバーディを狙って、70cmオーバーさせてしまいました。後で録画を観たら、解説の方も「普通なら入りそうですが10年ぶりですからね」と祈ってくださっているようでした。ウイニングパットを決めて、突然の優勝となりました。
――3戦連続予選落ちから、奇跡の大復活ですね。
中嶋:「辞めるか辞めないか」で悩んでいた2週間。そのシーズンの賞金額は0でした。誰も予想していなかった優勝だと思います。勝因は、私に「優勝インタビューでお礼が言いたい!」と思わせてくださった方々のおかげです
――優勝して感謝の気持ちを伝えることはできましたか?
中嶋:やっと言えました。ずっと練習してきた優勝インタビューでの御礼。あんなに練習していたのに、こみあげてきて言葉が詰まってしまいました。するとギャラリーから「がんばれー」との声。その声にまた涙が込み上げてきて、なかなか声を出せませんでした。なんとか、しっかり最後まで気持ちを伝えさせていただきました。一番泣いた優勝インタビューでした。
成績が悪いと人が去っていった苦い経験は「本当に自分にとって大事な人」を教えてくれた大切な宝ものへと変わりました。
