市場コーチは常識を覆す特訓で足立和也選手をW杯日本人初の快挙へ導いた
◼️歴史を塗り替えた瞬間――2016年ワールドカップの歓喜
――周囲から見れば「狂気」とも言える練習量が、ついに実を結ぶわけですね。
市場:満遍なく速くなろうとすることは、満遍なく遅いままということと同じです。だから私たちは、まずワールドカップの舞台で「スタートから第4ゲートまで」「ゴール前の最後の4ゲート」といった特定の区間だけでいいから、世界トップ5に入るタイムを出すという目標を一つずつ塗りつぶしていきました。
その手応えが確信に変わったのが、2013年のプラハでのワールドカップでした。予選でペナルティを取られたものの、純粋なタイム単体では世界10番手に相当する数字を叩き出したのです。
「このやり方は、間違っていない。世界に通用する」と少しだけ目標に手がかかった気がしました。
――そして2016年、足立選手がワールドカップで日本人初となる歴史的な銅メダルを獲得しました。
市場:本当は同年のリオデジャネイロオリンピックへの出場を最大の目標にしていたのですが、国内選考の最終レースで噛み合わず、オリンピック出場を逃してしまっていたのです。
しかし、そこで腐っている時間は無意味。「落ち込んでいる暇があったら、目の前のワールドカップで俺たちの実力を証明しよう」と切り替え、挑みました。
日本カヌー界史上、決勝(トップ10)に残ること自体が初めての快挙でしたが、セミファイナルを9位で通過し、決勝で3位に飛び込んだのです。
表彰台に立つ足立の姿を見たときは、本当に驚きましたし、自分たちが死に物狂いで積み上げてきた努力が、ついに世界のトップ層に届いたのだと感慨深かったですね。
