2028年ロス五輪のカヌースラロームでメダルを狙う長洲百香選手(左)と母・美穂さん
子どもが壁にぶつかったとき、親はどう向き合うべきなのか。2025年8月のワールドカップ・カヤッククロスで日本人初の銀メダルを獲得し、2026年3月のアジア選手権ではU23女子カヤックの個人・団体で2冠を達成した長洲百香選手。2028年ロサンゼルス五輪でのメダル獲得を目指す彼女を育て上げた母・長洲美穂さんの言葉には、子育てや教育について考える大きなヒントが隠されている。(取材・記事/大楽聡詞)
「なだめる」のではなく「乗り越える術」を提示する
今では日本代表として世界を舞台に戦う百香選手だが、その原点は3歳で通い始めたスイミングスクールにあった。
当時から「私は選手コースに行って、ゆくゆくはオリンピックに行く」という明確な目標を口にしていた百香選手。
しかし、幼い子どもにとって成長の過程は挫折の連続だ。進級テストに落ちて悔しさのあまり、スイミングスクールの更衣室から泣いて出てこられないこともあった。そんなとき、美穂さんは子どもを単になだめるような対応はしなかった。
水泳での挫折、そしてカヌー界の二刀流へ――ワールドカップで『日本人初の銀メダル』を掴んだ21歳の素顔
「泣いているときに、アイスをあげてごまかしてなだめてしまうのか。それとも『練習して自分で乗り越えていくしかないんだよ』と示せるのか。その違いは大きかったと思います。3歳の娘に『悔しかったら次はどうする?どうしたらいいと思う?』と問いかけ、『練習したい』と言うなら市民プールに連れて行って一緒に付き合いました」
目の前の不機嫌な姿を一時的になだめるのではなく、「悔しい」という感情を「次の行動(どう克服するか)」へエネルギーとして転換させる癖をつける。この幼少期からの関わり方が、困難に直面したときに自ら考え抜く強い思考力の土台となったのだ。
NEXT >> 主体性を育む「問いかけ」と「考える癖」
