市場コーチは常識を覆す特訓で足立和也選手をW杯日本人初の快挙へ導いた
――そこから、どのようなトレーニングを課したのですか。
市場:当時の日本のナショナルチームは、海外遠征に行っても予選通過(40位以内)すらままならず、予選落ちを繰り返すのが常態化していました。同じことをやっていても勝てない。
それで「少し別の観点からやってみよう」という提案をしました。「とりあえず2年間、まずは100%競技のみに集中しよう」と。
具体的には、陸上での筋力トレーニングなど一般的なメニューを排除しました。
――筋トレを完全に排除ですか?アスリートとしては異例の決断に思えます。
市場:カヌーを上手に扱えなければ、どれだけ筋力があっても意味がありません。水上で徹底的に負荷をかけ、競技に完全に「アジャスト(適応)した身体」を水の上だけで作る。これが私の理論でした。
毎日、朝から2時間、午後から2時間、さらに夜間は川の周りにライトを設置して暗闇の中で2時間、合計6時間以上、ひたすらカヌーに乗せて川の激流を漕がせ続けました。
――夜間まで川でカヌーを漕ぐというのは、想像を絶する過酷さです。
市場:今振り返っても凄まじい練習量だったと思います。乗っていない時間は、撮影したビデオを2人で穴が開くほど見つめ、海外のトップ選手との動きの差を徹底的に比較・分析しました。
私たちは絶対にフィジカル(体格や単純な直線のパワー)で欧米の選手に勝てません。ボートのセッティングも、スピードは出るけれど誰も曲げられないような極端に扱いづらい設定にわざとチューニングし、それをテクニックだけでコントロールする練習を繰り返しました。
