東京2020パラリンピック・カヌー競技日本代表(現在はパラカヌー競技のナショナルコーチ)である今井航一さん(左)と今井礼子さん
日本の習い事ランキングで常に上位に位置する水泳。多くの子どもたちが水泳教室に通う理由は、「学校の授業で困らないように」「体を丈夫にするため」といったものが一般的。
しかし、水泳指導とメンタルコーチングで多方面に活躍する今井礼子さんは、水泳の持つ真の価値はそれだけに留まらないと語ります。今井さんは2005年に水泳教室「ひまわり運動ひろば」を設立し、これまでに数多くの子どもたちを見てきました。その指導歴30年の中で、彼女が見てきたのは、水が持つ特別な力です。
◼️なぜ子どもは水の中で「解き放たれる」のか?
今井さんは、水の中にいる子どもたちの姿を「解き放たれている」と表現します。
学校生活やその他の習い事で、知らず知らずのうちにストレスや緊張を抱えている子どもたちは少なくありません。限られた空間、決められたルールの中で、自分を抑え込んでいる状態です。
しかし、水の中に入ると、その緊張がゆるみ、子どもたちは本来持っている好奇心と探求心を発揮し始めます。
例えば、水泳では「潜る」という行為一つをとっても、子どもたちの様子は大きく変わると言います。水の中の密度は、空気と比べて約800倍。陸上とは全く異なる環境に身を置くことで、体の動きがゆっくりになり、自分の体をどう動かせばどうなるのか、という実験を無意識に行い始めるのです。
「あんな潜り方したらどうなるんだろう?」「あの友達はなんでこんなに長く潜れるんだろう?」
こうした自発的な探求や他者との違いへの気づきは、学校教育ではなかなか育みにくい、非認知能力(意欲、協調性、粘り強さなど)の成長に大きく寄与します。
今井さんの教室では、あえて進級テストの回数を少なく設定するなど、子どもたちが「合格」に追われることなく、水中で自由に遊び、探求する時間を大切にしています。この「遊び」の時間こそが、子どもたちが水に親しみ、「水に委ねる」ことを学び、心を自由に解き放つ鍵となるのです。
◼️”習い事”を超えた水泳の価値
水泳は、単なる体力づくりのための運動ではありません。 水が持つ特殊な環境を通じて、子どもたちの心と体の緊張を解き放ち、自ら学ぶ力を育む場として機能しているのです。
「子どもの集中力がない」「なんだかストレスを抱えているようだ」と感じる保護者の方こそ、今井さんの話に耳を傾けてみてください。水泳が、あなたの想像以上に、子どもの心の成長に深く関わっていることがわかるはずです。
ポッドキャスト「ジュニアアスリート応援プロジェクト」では、今井礼子さんがこのテーマについて語っています。
<インフォメーション>
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今井礼子 X
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編集/まるスポ編集部
