現在は地元千葉で後進の育成に励む杉本氏(写真/本人提供)
技術や体力だけでは到達できない「超一流」の境界線。そこを分かつのは、目に見えない「人間性」であると杉本忠氏は断言する。本稿では大谷翔平を例に挙げながら、なぜ感謝の心が「運」を呼び込み、相手へのリスペクトが「勝負強さ」へと変換されるのかを紐解く。単なる精神論に留まらない、勝負師としての「真の優しさ」の定義に迫る。(取材・文/大楽 聡詞)
【第4回・人間性】「感謝」と「リスペクト」――なぜ大谷翔平選手は超一流なのか
――最後に「人間性」について伺います。一流選手に共通する「徳」とは何だと思われますか。
杉本:一言で言えば「感謝の心」です。私は拓大紅陵時代、当時の小枝守監督から人間性を問われる指導を受けました。当時はピンときませんでしたが、野球を続けるにはお金もかかりますし、進学や社会人、プロへと進む門はどんどん狭くなります。その限られた環境を与えてくれた親や関係者への感謝があるかないか。それが私生活に現れ、ひいては野球の取り組みの差になります。
甲子園・都市対抗野球準優勝ピッチャー、次世代に繋げたい想い(4)
――今、メジャーリーグで活躍する大谷翔平選手にも通じる部分でしょうか。
杉本:彼はまさにその象徴ですね。家族や周囲への思いが素晴らしいからこそ、実力も比例して伸びている。よく「運も大事だ」と言われますが、私は「運を呼び込むのも人間性」だと思っています。
相手の気持ちを「読む」ことが、勝負の鍵になる
――人間性が高いと、プレーにはどう影響するのでしょう。
杉本:人間性とは「相手の立場に立って考えられる力」です。それができる投手は、チームメイトがエラーした際、その心理状況を察して「俺が抑えるから気にするな」とポジティブな声をかけられる。逆に相手打者の心理を読み、配球に活かすこともできます。ただし、勘違いしてはいけないのが「ただ優しいだけ」では勝てないということです。
――「優しさ」と「勝負」の使い分けですね。
杉本:リスペクトは持ちつつも、勝負の場ではシビアでなければなりません。例えば、相手に当てたくないという「優しさ」だけで投げると、逆に気持ちが弱くなってデッドボールが増える。相手を攻め抜く「強い気持ち」でインコースを突く。この心の使い分けこそが、スポーツにおける真の人間性だと私は信じています。
プロフィール
杉本忠:1975年生まれ千葉県出身。父と兄の影響で小学生から野球を始める。その後、拓大紅陵に進学。高校3年で甲子園に出場し準優勝。大学卒業後、ヨークベニマルで活躍。だが野球部廃部に伴い、シダックスに移籍。野村克也氏より指導を受け、2003年の都市対抗野球大会でチームを準優勝に導いた。現在は、地元高校で投手の臨時コーチを務める。
編集/まるスポ編集部
