2028年ロス五輪へ! 愛弟子の出場を目指し、指導に励む市場大樹コーチ
激流を読み、コンマ数秒の壁に挑むカヌースラローム。かつて日本選手権を制し、世界の壁に挑んだ一人の男がいる――「市場大樹」。2014年まで現役選手として活動し、現在は日本カヌースラローム界の第一人者である足立和也選手らを指導するコーチだ。しかし、その歩みは順風満帆なものではなかった。世界の強豪との圧倒的な差、「自分の知識はすべて間違っているかもしれない」という葛藤。指導者としての「腹をくくった」ターニングポイント、そして愛弟子との運命的な出会いについて、その真実に迫る。(取材・記事/大楽聡詞)
◼️選手と指導者の狭間で――2004年、キャリアの転換期
――市場さんは2014年まで現役選手として活動。選手として活動しながら、徐々に「コーチ」という役割に関わるようになったと伺いました。
市場:きっかけは2004年頃に遡ります。当時、ジュニアの世界選手権に帯同するスタッフが不足しており、「誰か面倒を見られる人はいないか」という話が持ち上がったのです。
そこでコーチではなく、「帯同スタッフ」としてのスタートです。私自身もまだ現役選手でしたから、自分の練習をしながら若手の面倒を見るという二足のわらじ状態でした。
――ご自身も現役のトップ選手として上を目指す最中、指導者としての役割を並行して担うことへの戸惑いや、葛藤はありませんでしたか。
市場:それが、不思議となかったのです。カヌーは元々、競技人口が少ないスポーツです。私たち自身も、上の世代の先輩方に海外のワールドカップへ連れて行ってもらい、現地で様々なことを教わりながら育ってきました。それが当たり前でした。
自分たちが練習している環境に下の世代の子たちが「一緒に練習させてください」と入ってくる。普段のトレーニングメニューを私たち年長者が作り、自然と彼らの面倒を見る。
それが日常になっていたので、彼らが海外遠征に行くからと、そのまま自然な流れでついて行ったという感覚。当時は、今でいう「専属コーチ」のような専門職はほとんど存在していませんでしたから。
