2028年ロス五輪へ! 愛弟子の出場を目指し、指導に励む市場大樹コーチ
◼️「自分の経験則はすべて捨てる」――指導者としてのリセット
――その後、2003〜2004年頃に再び競技に関わるようになり、コーチングへの道が開かれます。
市場:「もう一度カヌーに関わりたい」という思いが湧いてきました。ただ、その時点ですでに「自分が現役として世界のトップを目指すのは、年齢的にも時間的にも厳しい」と客観的に悟っていました。
だから自分が海外でトレーニングする際、下の世代の選手たちをサポートし、海外の最新情報を収集して還元しようという気持ちにすんなり切り替えられたのだと思います。
――現在は、東京オリンピックに出場した足立和也選手をはじめ、齋藤彰太選手、齋藤康祐選手といった日本のトップ選手たちを指導しています。
市場:実は、私の指導者としての本当の分岐点、「腹をくくらなければならない」と感じた瞬間は、若き日の足立和也が私の元に飛び込んできた時でした。
――足立選手は大学を中退して、当時市場さんが拠点を置いていた山口県へ転がり込んだと聞きました。
市場:足立が中学生の頃から、「非常に運動神経が良くて、身体が動く子だ」と注目していました。ただ、当時はまだ少しムラっ気のある選手だったのです。
そんな彼が大学1、2年生になった頃、相談を受けました。「自分は海外の選手と対等に戦いたい。そのために大学に進んだけど、今の環境のままでは海外の厳しいコースに対応するトレーニングができない。このままここでカヌーを続けても、世界には届かないと思う。それなら、もうカヌーを辞めようと思っている」と。
――若くして引退を考えていたのですね。その時、市場コーチはどのような言葉をかけたのですか。
市場:当時、私は山口国体(2011年)に向けて山口県に拠点を置き、大会後も地域に遺せるコースの設営や、競技を文化として根付かせるためのマネジメントを担っていました。
足立から「そちら(山口)の環境で挑戦してみたい」と言われたのですが、大学を中退するというのは人生の大事です。
「本当に学校を辞めるのか?もう少し頭を冷やして考えたほうがいい」と諭しました。
しかし、彼の決意は私の想像を超えていました。「もう大学は辞めてきました。その代わり、絶対に僕の面倒を見てください!」と。本当にリュックサック一つだけを背負って、知人の車を乗り継いで、ヒッチハイクのような状態で山口まで来たのです(笑)。
