“水泳議連”の挑戦を今井礼子氏はどう見るのか?(写真/高橋由理)
超党派の国会議員連盟「水泳議員連盟(水泳議連)」が発足し、学校教育における水泳授業の維持や「水難事故ゼロ」を目指す動きが本格化している。
水泳授業の廃止に歯止めを 超党派『水泳議連』が挑む水難事故ゼロへの道
猛暑、プールの老朽化、教員不足といった課題が山積する中、政治主導の改革に期待が寄せられる一方で、実際の教育現場はどう受け止めているのだろうか。
30年にわたり水泳指導やメンタルコーチングに携わり、子どもたちを見つめ続けてきた水泳教室「ひまわり運動ひろば」主宰の今井礼子さんに、現場の実情とこの動きに対する見解を聞いた。
猛暑対策の工夫と「民間委託」への前向きな視点
連日の猛暑が続く中、現場ではすでに独自の熱中症対策について試行錯誤が重ねられている。
今井氏が訪れる保育園などでは、プールサイドに人工芝を敷き、頻繁に水撒きを行うだけでなく、プール上部に農業用の遮光ネットを設置して直射日光を遮るなど、現場の工夫で安全を確保。
こうした過酷な環境やインフラの老朽化、教員不足を背景に急速に進む「民間のスイミングスクールへの委託」について、今井氏はこう語る。
「学校現場だけではどうにもできない構造的な理由が大きく、民間委託そのものは『子どもが安全に水に触れる機会を守る』という意味で前向きに捉えています」
ただ地域によって学校や民間施設、指導者の質・人数には大きな差がある。この現状について、今井氏はこう指摘する。
「委託が進む地域と、委託したくてもできない地域の“安全教育の格差”が広がっているのも気になっています」
学校の水泳教育の本質「身体の危機管理能力」
今井氏が最も強調するのは、学校における水泳教育の「目的の再定義」だ。水泳授業の価値は、決して泳力の向上や競技力の育成だけではない。
「学校教育の水泳は、“子どもの身体がどう育つか”を軸に議論されるべきです。4泳法(クロール・平泳ぎ・背泳ぎ・バタフライ)が泳げなくても、机上では得られない『水の特性(浮力・水圧・水温など)』を体感し、水への恐怖心をなくすことが非常に大切です」
具体的には、以下のような「危機環境における身体の判断力」を育てることこそが、水泳授業の本質であると指摘。
・身体のコントロール:水中でどうすれば自分の身体が安定し、どうすればバランスを崩すのかを知る。
・呼吸の確保:万が一の際、命を繋ぐためにどのような姿勢やコツが必要かを身につける。
・着衣泳の実践:服を着た状態でどのように姿勢を保つべきかを考え、経験する。
子どもたちが将来、自分で選択し自分で行動していくという主体性を持って生きていく人間になるための教育として、競技とは切り離した「命を守るための安全教育」こそが必要とされている。
ちなみに、香川県では教育委員会が主になり「水辺の安全教育」に力を入れており、ライフジャケットのレンタルステーションを設置したり、ライフジャケットの使い方講習も行っている。
>>> 多様なアプローチと選択肢の必要性
