ソフトバンクが27日にリーグ2連覇を果たした。その主役の一人が今季加入した上沢直之。
キャリアハイに並ぶ12勝(29日現在)を挙げ“10勝カルテット”の一員として8月には月間MVPに輝くなど、米球界から移籍して1年目から活躍を見せた。
小久保裕紀監督、周東佑京選手、柳町達選手と共に優勝記者会見にも出席した上沢は優勝の感想を問われると、「率直に嬉しい気持ちでいっぱいですし、1年目からこういう経験をさせてもらうことできて、本当に今は幸せです」
日本ハム時代、16年にチームは日本一となったが自身は貢献することができなかった。そんな中、ソフトバンクに入団した一年目から活躍を果たし、優勝を味わうことができた。
「高校時代から優勝というものに縁がない人生なのかなと思っていましたが、こうして優勝することができて、特別な思いというか、本当に良かったなという思いでいっぱいです」
しかしその船出は批判の嵐という、とてつもない逆境からのスタートだった。
日本ハムで12年プレーし、23年オフにポスティングシステムを利用し目標だったMLBに挑戦した。しかし、マイナー契約を交わしたレイズと契約が成立するも3月に契約を破棄し、レッドソックスに移籍。譲渡金は金額は6250ドル(当時のレートで約91万円)だった。
レッドソックスでは2試合登板にとどまり、大半がマイナー暮らし。右肘の故障で満足に伸ばすこともままならない状態だったという。悩んだ末にわずか1シーズンで日本球界復帰を決断。
古巣の施設で練習したり関係者と相談するなど、日本ハムとの縁も続いていた。しかし、途中から様相が変わる。
その日本ハムから1年契約でオファーがあったものの、ソフトバンクから4年総額10億円プラス出来高払いの大型契約を提示される。熟考した末にソフトバンクへの移籍を決断した。
たった1年で日本球界に復帰するだけでなく、FA権がない中で国内他球団に移籍する例がまた誕生し、ここでファンや球界OBからの批判が日に日に増していく。
日本ハムの新庄剛志監督も「一緒にやりたかった」「育て方を間違えたのかな」と、マイナー契約行きの不安を案じながらも送り出した元指揮官からも残念がるコメントが挙がっていた。
多くの批判にさらされながらも、一軍のマウンドで結果を残している上沢。優勝争いに絡むごとに好投を見せ、「誰よりも優勝したいと思っている」と、強い気持ちで日々臨んでいた。
ただ、月間MVPの受賞会見でも「こういう(優勝争いの)時期を充実した気持ちで過ごせること自体が野球選手とって幸せなので、プレッシャーと考えずに僕は嬉しく思っています」と述べた。
CSでも古巣とぶつかる可能性もある上沢。「この決断が良かったと思えるように。自分の野球で示せたらと思います」という言葉通り結果で示しているが、古巣相手にも大舞台でその実力を示そうとしている。
記事/まるスポ編集部
