大岩の太い腕から繰り出されるビッグロック(ヘッドロック)
プロレスにおける「ヘッドロック」とは何か。誰もが最初に習う基本中の基本でありながら、試合を決める技として扱われることは現代プロレスにおいて極めて稀だ。しかし、この古典的な技に新たな光を当て、G1 CLIMAXのリングで最大の猛威を振るっている男がいる。新日本プロレス・大岩陵平だ。
大岩のヘッドロック、人呼んで「ビッグロック」の恐ろしさは、他団体のレスラーをも唸らせている。DDTプロレスの男色ディーノは自身のInstagramで大岩に言及。「ヘッドロックは開始直後に出る相手のスタミナを削っていく締め技」と本来の役割を定義しつつ、「意外でもありインパクトのある決まり手」として、大岩が繰り出すこの技の脅威に強い注目を寄せた。
大岩のヘッドロックが一躍注目を浴びたのは7月29日の大阪大会。G1 CLIMAX Aブロック公式戦、大岩はSANADAからビッグロックで堂々のギブアップ勝ちを収めてみせた。過酷な『G1 CLIMAX』の歴史において、ヘッドロックによるギブアップ決着は史上初の快挙。基本技を極限まで練り上げ、フィニッシュホールドへと昇華させた大岩の執念が、G1史に新たな刻印を刻んだ瞬間だった。
そして迎えた1日、広島大会のAブロック公式戦。自らの理想とするプロレススタイルを掲げ、「G1優勝」と書かれたしゃもじを手に登場した大岩は、IWGPヘビー級王者・辻陽太をもその「ヘッドロック地獄」へと引きずり込んだ。
試合開始から徹底的なビッグロックで辻のスタミナと精神をじわじわと削り、負傷している王者の右腕へ集中攻撃を仕掛ける大岩。辻が反撃を試みようとも、技を仕掛けるたびに吸い寄せられるようにその首を捕獲し、試合のペースを一切渡さない。
中盤以降も、大岩の執念は留まることを知らなかった。辻からDDTやジャーマン・スープレックス・ホールドを連発されようとも、締め上げた首だけは決して離さない。辻になりふり構わず力づくで場外へ投げ捨てさせ、トペ・スイシーダーを敢行させるほどの苛酷な展開へと追い込んでいった。
終盤、天山スープレックスからTHE GRIPを狙う大岩は、至近距離からのジーンブラスターを被弾。しかし、極限状態に陥ってもなお、彼の腕は自然と王者の首へと巻きついた。まさに執念のビッグロック。だが最後は辻のファイアーブラスターに沈み、3カウントを許すこととなった。
結果こそ王者の矜持に屈する形となったが、IWGP王者を泥臭く、そして極限まで苦しめ抜いたのは間違いなく大岩の腕力と執念だった。「たかがヘッドロック」という概念を打ち破り、G1のリングに新しい風を吹き込んでいる大岩陵平。彼の腕が相手の首を捕らえるたび、私たちはまた、プロレスの原点にある面白さと底知れぬロマンに魅せられてしまうのだ。
記事/大楽聡詞
編集/まるスポ編集部
