元ドジャースの守護神・斎藤隆氏
質問コーナーでは“準備”についてアドバイス
トークショー後半では、来場者からの質問コーナーも行われた。ここで印象的だったのは、斎藤氏が“元メジャーリーガー”としてだけはなく、一人の野球人として誠実に言葉を返していたことだった。
まず寄せられたのは、大谷翔平の二刀流に関する質問だった。
質問したファンは、実際に現地観戦した試合で大谷選手が投手のみで出場していた試合だったという。その上で、「二刀流をやるなら翌日を休ませるべきなのか、それとも投手だけ・打者だけの日を作るべきなのか」と疑問を投げかけた。
これに対して斎藤氏は少し考えながら、自身の見解を示した。
「大谷選手は“二刀流”としてメジャーに行ったわけですよね。彼自身、いつ何が起きてもいいっていう覚悟を持って行ってるはずなんです。だから僕は彼がやりたいって言うならやらせるべきかと考えています。
だって、どこのサンプルにもないんですよ。前例がない。だから“普通はこうする”っていう考え方を当てはめる必要がないと思うんです。彼が望む形を、一番大事にするべきじゃないかなって僕は思います」

続いては現在野球で外野手をやっている少年からは、「試合に入る時の気持ちの整理について教えてほしい」という質問も飛んだ。
斎藤氏は「これは長くなるぞ」と笑いながらも、丁寧に言葉を選んでいく。
「多分聞きたいのはメンタルの部分だと思うんですけど、やっぱり大事なのは“準備”なんですよね」
まずは普段からのウォーミングアップやストレッチを丁寧に行い、「今日は体がちゃんと動く」という感覚を確認すること。そして外野手なら風や球場のクッション、打者なら相手投手のタイミングをネクストバッターズサークルから頭に入れておくことの重要性を説いた。
「今日、自分ができる最大のものを出そうとすると、大抵空回りするんです。だから“今日やれること”に集中する。まず自分がやるべきことを冷静に整理することが大事なんじゃないかなと思います」

自身の現役時代を振り返りながら、こう続けた。
「僕なんて、マウンドで2つも3つも考えられなかったです。“今日は低めに投げよう”とか、“今日はコースを丁寧に行こう”とかそれぐらい。本当に一つだけでした。
打つ時はタイミング、守備の時は一個だけとか。それぐらいの集中の方が、人って自然に動けると思うんですよね」
メジャーで世界の強打者と戦ってきた男の言葉だったからこそ、そのアドバイスはより説得力を持って会場へ響いていた。
トークショーは約1時間にわたり行われ、大盛況のまま終えた。
斎藤氏が紡いだ言葉の端々からは、20年前から変わらないドジャースへの深い愛着と、未来を担う後輩たちへの熱いエールが終始溢れていた。
かつてパイオニアたちが拓いた道は、より一層強固な絆で次の世代へと受け継がれている。ファンにとってもそれを確信できるような格別な時間となった。
(了)
