リオ・東京・パリと3度の五輪を経験した矢澤亜季
◼️カヌーに息づく「日本舞踊」の繊細な体幹
――矢澤選手といえば、カヌーと並行して続けてこられた「日本舞踊」が、競技にポジティブな影響を与えているというお話が印象的です。
矢澤:現在は西川流の名取でもあり、『西川 那美波(なみな)』という芸名を持っています。カヌー選手として“美しい波”を捉えられるように、という願いを込めて名付けられました。
日本舞踊(西川流)は体幹がしっかりしていないと美しく踊れません。片足で立って腰を落とし、静止する。そうした難しい動きの中で、繊細に体をコントロールする技術は、確実にカヌーに繋がっています。
――具体的には、どのような場面で活かされるのでしょうか。
矢澤:西川流の振り付けはテンポがゆっくりしたものが多いんです。この「ゆっくり動く」という動作は、実は激しい動きよりも全身の筋肉を使い、非常に疲れます。
カヌーもただ力任せに漕ぐのではなく、しなやかに、流れに合わせてボートを動かす局面があります。激しい流れの中でも冷静に、しなやかにボートを操る感覚は、日本舞踊で培ったものだと思っています。
――中学を卒業して東京へ移られてからも、その「和」の心は持ち続けていらっしゃる?
矢澤:はい。中学までは飯田市で稽古に励み、東京へ出てからは頻繁には行けなくなりましたが、今でも続けています。お茶も習っていましたし、球技は苦手なんですけど(笑)、水の上だけは私の居場所だと思えるんです。
<後編に続く>
矢澤 亜季(やざわ あき) 1991年生まれ、長野県飯田市出身。システックス所属。父と兄の影響で小3からカヌーを始め、リオ、東京、パリと五輪3大会連続出場を果たした日本カヌースラローム界のトップランナー。主な戦績に14年アジア大会銅メダル、18年アジア大会金メダル、23年アジア選手権2位など。その強さを支えるのは、祖母の影響で3歳から始めた日本舞踊。西川流の名取であり、「美しい波を捉える」という願いを込めた「西川 那美波(なみな)」の芸名を持つ。繊細な体幹と和の精神を競技に昇華させ、現在は新種目カヤッククロスにも挑戦。2028年のロス五輪、そして地元開催の「2028年信州やまなみ国スポ」での集大成を目指す。
編集/まるスポ編集部
写真/本人提供
