カヤッククロスで、ワールドカップ日本人初となる銀メダルを獲得した長洲百香
かつて、水泳でオリンピックを目指しながらも、厳しい環境に挫折した一人の少女がいた。しかし、その「水の感覚」は形を変えて激流の世界で開花することになる。
2025年、新種目カヤッククロス(4選手が同時にスタートし着順を決めるレース)のワールドカップで日本人初となる銀メダルを獲得し、世界を驚かせた長洲百香(21)。中学一年生までスプリントとスラロームを並行した「二刀流」の歩み、そして大学で戦術を研究する彼女の原点には、「負けず嫌い」な性格にあった。2028年ロサンゼルス五輪のメダル候補筆頭へと駆け上がった、彼女の「知略」と「本能」のルーツに迫る。(取材・記事/大楽聡詞)
◼️水泳での挫折と、運命的なカヌーとの出会い
――カヌーを始めたきっかけを教えてください。
長洲:3歳から水泳を始め、当時は選手コースでオリンピックを目指していました。でも、小学1年生の頃に指導のあり方に悩むことが多くなり……。
今では考えられないような厳しい環境でした。あまりにも過酷だったこともあり、小学2年生の時に「もうやめよう」と決意したんです。
――それは辛い経験でしたね。そこからどうしてカヌーの道へ?
長洲:水自体は大好きだったので、別の競技を探しました。そんな時、地元(千葉県佐倉市)の印旛沼でカヌー体験ができると聞いて行ってみたら、それがすごく楽しくて。そこから本格的に競技を始めました。
――始めてすぐに結果を出しましたが、水泳の経験が活きたのでしょうか。
長洲:水を「キャッチ」する感覚が水泳と共通していたんだと思います。カヌーはパドルという道具を使いますが、水を掴む感覚がすんなりと自分の中に入ってきました。「自分にはこの競技の適性がある」と実感できて、本当に楽しかったですね。
