カヌー人生の集大成は、信州の川で。矢澤亜季が誓う『2028年、長野への凱旋』
日本国内で圧倒的な実力を証明し、世界へと舞台を移した矢澤亜季(システックス所属)。しかし、世界の壁は技術だけでなく「文化」や「考え方」の違いという形でも立ちはだかった。海外選手たちの奔放なライフスタイルに衝撃を受け、自らの「真面目さ」と向き合った日々。そして今、新種目「カヤッククロス」への挑戦と、2年後に控える地元・長野での「国スポ」開催。競技人生の集大成に向け、彼女が見据える景色とは…(取材・文/大楽聡詞)
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◼️海外遠征で知った「真面目さ」のその先
――海外遠征を重ねる中、最大の衝撃は何でしたか?
矢澤:日本人は真面目だと言われますが、私もその一人でした。例えば食事。体調管理のためにジャンクフードは避けるのが当たり前だと思っていました。でもある時、オーストラリア遠征中に海外の友人に誘われて、試合前日にオペラを見に行ったんです。
――試合の前日は、普通なら一番安静にしたい時ですよね。
矢澤:そうなんです。でもシーズンオフの大会だったので、コーチに相談して行ってみました。そうしたら、彼女たちは「お腹空いたからポテト食べる!」って言い出して(笑)。オペラが終わった後も、夜8時過ぎに「ハンバーガーにしよう!」ですよ。
――それは……驚きですね。矢澤選手はどうされたのですか?
矢澤:雰囲気を壊したくなくて、私も腹を括って食べました(笑)。さらにその後、アイスまで食べて。翌朝の会場入りも、私が「2時間前」と言うと「早すぎる!」と笑われました。でも、結局彼女たちはしっかり決勝に残って結果を出したんです。
――「ルーティーンを守ること」が全てではない、と。
矢澤:そうですね。何を食べたか、何時に寝たかといった表面的なことよりも、いかに自分の「オン・オフ」をコントロールできているか。たとえ1日ケーキを食べたとしても、何も変わらないマインドで挑める強さを知って、私の考え方も変わりました。
予期せぬトラブルが起きても「しょうがない、切り替えよう」と前向きに捉えられるようになったのは、彼女たちのおかげです。
