――それは野球をする上で、ということですか?

杉本:野球だけではなく、働いていても感じます。影響を受けた3人の方が共通して言っていることは「人間性」なんです。人間性がしっかりしてないと選手として伸びない。野球にしても会社にしても個人競技ではない。各々の仕事を全うしチームとして勝たなければいけない。

ミスをしたら、それをチームとしてどうやってカバーするのか?会社にしても同じ方向を向いてない人がいると組織が成り立たない。選手の中に1人でも違う方向をむいているとダメなんです。「僕は1人で大丈夫です。全てできます」という人が1人でもいると、チームのバランスが崩れてしまうんです。

物事の考え方を、別の角度から捉えてみる。野村監督は「打者は3割バッターで良しとされるのが、投手は7割抑えられるんだよ。見方を変えれば良いのに、なんで悪いことばかり考えるの?」とか。

その精神的な部分をコントロールできるようになると物事って良い方向に運びやすい。それって競技においてもそうですし、会社等の組織の中で生きていく上でも必要です。

今でもいろんな場所に行くと、僕はチームとして考えて「自分の役割はどうなんだ?」と考えてしまう。過去を振り返ってみると自分の人生の中で、自分が主人公になった時の記憶がないんですよ。高校時代も故障して病み上がりでなんとかレギュラーになれたし…一線でやっているわけではありません(苦笑)。

大学に入ったらサイドスローになり、思うようにピッチングができなかった。腐っていた時、やはり周りの人たちにフォローしてもらい、社会人野球の世界に入れた。

シダックス時代も、ヨークベニマルから関東のチームに移籍して、なかなか芽が出ないところを人との出会いで、なんとか上向きな人生に変わった。決して順風満帆な野球人生ではなかったですね。

裏方として他人をサポートする気持ちも理解できる。それは自分の人生でメインを張ったことがないからだと思っています。自分が主人公というより、「自分が動いて、他の人に良い結果が出れば良いな」と考えちゃいますね(笑)。
<(4)に続く>

<プロフィール>
杉本忠:1975年生まれ千葉県出身。父と兄の影響で小学生から野球を始める。その後、拓大紅陵に進学。高校3年で甲子園に出場し準優勝。大学卒業後、ヨークベニマルで活躍。だが野球部廃部に伴い、シダックスに移籍。野村克也氏より指導を受ける。現在、袖ヶ浦シニア等でコーチとして後進の育成に携わる。

取材・文/大楽聡詞

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