カヌーポロの技術向上のため、高校3年間は水球部に所属した木村亮太選手
第5章:1本のダッシュに意味を持たせる――「魅せる」ことへのこだわり
――その卓越した「そうぞうりょく」を研ぎ澄ますために、日常生活ではどのような意識を持って過ごしていますか?
木村:24時間の日常生活の中で常に考えているのは、「他の人が絶対にやっていないであろう努力をする」ということです。
――他の人がやって”いない”努力、ですか。
木村:例えば、高校球児がみんな「甲子園出場」という同じ目標を目指して練習しているとします。1回戦で負けてしまうチームの選手も、決勝まで行くチームの選手も、毎日バットを振り、ボールを投げ込んでいるという事実自体は同じですよね。
では何が違うのかというと、その練習の「密度の濃さ」だと思うんです。
私の場合は、トレーニングで10本のダッシュをするにしても、「1本目はこのシチュエーションを想定する」「5本目はこういう相手のマークを外すダッシュにする」と、自分の中で極めて緻密な“自分ルール”を設定して臨みます。
1回1回のトレーニングに完全な意味とテーマを持たせる。この小さな積み重ねを、34歳になった今までずっと続けてきたからこそ、埋められないほどの大きな差となってプレイに現れているのだと思います。
――ただ漫然とこなす練習とは、1本の重みが全く違うわけですね。1回ごとの練習にそこまで緻密なテーマを課す姿勢には、まるで大谷翔平選手のような徹底した自己管理と求道者的なアスリートマインドを感じます。
木村:ありがとうございます(笑)。あとは、自分の試合動画をとにかく繰り返し見返します。客観的に自分の動きをチェックするという目的もあるのですが、根本にあるのは「見ている人が一番ワクワクするプレイヤーでありたい」という想いです。
「この選手がボールを持ったら、一体次に何をやらかしてくれるんだろう」と、観る者を釘付けにするエンターテイナーでありたい。
試合中は完全に集中しているので自分のプレイなんて覚えていないのですが、後から動画を見た時に、私自身が「こいつ、次は何をするんだ?」と自分に対して一番期待してしまうような、そんな魅せるプレイを追い求めてます。

――「試合に勝つ」だけでなく、観客を熱狂させるエンターテインメントに通ずる、非常にプロフェッショナルな美学ですね。
木村:現在、世界大会で圧倒的な強さを誇るのがドイツ代表なのですが、彼らのスタイルはいわば「遊びの要素が一切ない、冷徹なまでのスキルとフィジカルで圧倒するシステム」なんです。
しかし、私たち日本人が同じフィジカル面の真っ向勝負を挑んだところで、体格のベースが違う以上、絶対に勝てない。
では、どこで世界の屈強な選手たちと勝負して勝つのかと言えば、それは「脳の部分」であり、球技(Play)の根本にある「遊び(駆け引き)」の部分だと思うんです。
変化球やインサイドワークといった緻密な領域で世界と勝負できること。それこそが、観る人をワクワクさせるこの競技の本当の面白さであり、私が追求し続けたいプレイの本質です。
