カヌーポロの技術向上のため、高校3年間は水球部に所属した木村亮太選手
高校卒業後、カヌーの名門・駿河台大学へ進学した木村亮太選手。160cm台と小柄な体躯でありながら、世界の巨大な壁を翻弄し続けるプレースタイルの本質に迫ります。「ピッチ全体をコントロールする」という卓越した俯瞰の視野と、競技において最も重要視する「2つの”そうぞうりょく”」の正体とは…1本のダッシュにすら緻密なテーマを持たせる求道者的な日常や、観客を熱狂させるエンターテインメントとしてのプロ美学に迫ります。(取材・文:大楽聡詞)
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第4章:光が強ければ影は濃くなる――脳内で描く「2つの“そうぞうりょく”」
――高校卒業後はカヌーの名門・駿河台大学へ進学されます。そこではカヌースラロームでオリンピックにも出場した矢澤亜季選手と同級生だったそうですね。
木村:矢澤選手とは同じカヌー部の同級生です。スラローム部門とポロ部門で分かれてはいましたが、一緒に練習をすることもありました。彼女のトレーニング動画などを見ても、女性の枠を超えた凄まじいフィジカルと体幹を持っていますよね。以前、一緒にカヌーポロをやったこともあります(笑)。
――それは豪華なセッションですね!ところで先日、木村選手の試合を拝見したのですが、相手チームが木村選手に対して2人、3人とマークを集中させて強烈なプレッシャーをかけていました。しかし木村選手は、そのディフェンスを引きつけてから味方へ完璧なパスを配給し、チャンスを演出。あのプレースタイルにはどのような意図があるのでしょうか。
木村:私は「光が強ければ影は濃くなる」というイメージを大切にしています。完全に自分の中の確率論なのですが、相手ディフェンスのマークが自分に集中したとしても、自分がシュートを打って入る確率が高ければそのまま自分でシュートを選択します。
逆に、自分が相手を強烈に引きつける「強い光」を放てば放つほど、マークが外れた味方のエリアにはフリーという「濃い影(スペース)」が生まれる。
そこにディフェンスを集中させておいて、一瞬の隙を突いて守りを無力化するようなパスを通す。そういう戦略的なことを考えてコート全体をコントロールしています。
――サッカーの世界では、名選手が「自分を上空から鳥の目線で見下ろしているような俯瞰(ふかん)の視野を持っている」と語ることがありますが、木村選手もそういった感覚があるのですか?
木村:私の場合は、上空から俯瞰で見ているというよりは、「首を振る回数(周囲を確認する頻度)を増やす」ことで他の選手よりも多くの情報を処理しているのだと思います。
常に細かく状況を観察し、『次に相手がここに詰めてくるだろう』『味方がこう動いてくれるだろう』という予測を頭の中で組み立てている。その『予測の精度』が、他のプレイヤーよりも優れているのだと感じています
――その「予測の精度」の高さは、一体どこから生まれるのでしょうか。
木村:私が競技において最も重要視しているのが2つの意味での「そうぞうりょく」です。1つは、コート上で誰も思いつかないようなクリエイティブなプレイを脳内に思い描く「理想を描く方の想像(Imagination)」。
もう1つは、自分が“今何ができるのか”を正確に把握した上で、次の行動と展開を組み立てる「構築する創造(Creation)」。
この2つの“力”を極限まで駆使し、周囲の動きの先を完全にコントロールする。これが、私のプレイスタイルの軸になります。
>>> 第5章:1本のダッシュに意味を持たせる――「魅せる」ことへのこだわり
