日本パラカヌー連盟の代表理事・会長を務める小林慎一朗さん
「知名度」と「環境」の壁――運営のリアルな苦悩
――野球やサッカーと比べると、パラカヌーは知名度の面で差があると思います。運営の現状はいかがでしょうか。
小林:正直に申し上げますと、競技者も事務局のスタッフもまだまだ少ないのが現状です。非常に限られた人数で意思決定や運営を行っているため、どうしても「井の中の蛙」になりがちで新しいアイデアが出にくいという課題もあります。
日々の業務に追われ、やりたいことに手が回らない。そこを私たちの知見でお手伝いし、少しでも前に進めればという思いで活動しています。
馬術がもたらす「共生」のカタチ――日本障がい者乗馬協会・河野事務局長が語るパラ馬術の現在地
――運営をされる中で、人知れず抱えている悩みなどはありますか。
小林:スタッフのほとんどがボランティアで動いているという点です。イベントの運営や行政への申請業務など、多忙な中で皆さんにお願いするには限界があります。
平日は仕事を持っている方が多いので、ボランティア精神だけに頼り切るのは非常に大変だと感じています。
水の上では誰もが平等。カヌーが持つ「非日常」の魅力
――今後、パラカヌーをどのような形で広めていきたいと考えていますか。
小林:カヌーという競技の難しさは、近くに「水辺」がないと体験できない点にあります。大きな艇を個人で所有したり、借りる場所も限られています。
普及の難しさを痛感していますが、一度体験していただくと「気持ちよかった」「非日常で最高だった」と皆さん喜んでくださるんです。
今はプールやアクセスの良い施設を借りて体験会を増やし、まずは興味を持っていただく人を増やすこと。そして頑張っている選手たちを身近に感じて応援してもらえる環境を作っていきたいですね。
――体験会に来られた方の反応はいかがですか?
小林:最初は「水の上に出るのが怖い」「艇がグラグラして不安」と仰る方もいますが、いざ漕ぎ出してみると歓声が上がります。
私たちのキャッチコピーに「水の上は究極のバリアフリー」という言葉がありますが、水面に出てしまえば、健常者も障がい者も外からの見え方は変わりません。
目線が同じ高さになるので、同じ景色を共有でき、ご家族同士の会話も弾みます。そこに非常に大きな可能性を感じています。
