
アスリート向けデータマネジメントシステム「ONE TAP SPORTS(ワンタップスポーツ)」を提供する株式会社ユーフォリア(本社:東京都千代田区)は、国立大学法人鹿屋体育大学(所在地:鹿児島県鹿屋市)との産学連携プロジェクトを始動した。本プロジェクトはスポーツにおけるAI等のテクノロジー活用を具現化し、選手のケガ予防と競技力向上を科学的に支援するものだ。今後は両者で蓄積されるデータを活用しAIを用いた最適なトレーニングメニューを提供する機能の開発を目指す。
科学的アプローチでスポーツ界の長年の課題を解決
アスリートにとって日々のコンディション管理やトレーニングは競技力向上の根幹をなす。しかし、これまで「何をどれくらい行えば、どのような結果が得られるか」という問いに対する答えは指導者や選手の経験則に依存することが多く、客観的な判断基準を示すことが長年の課題であった。この課題を解決するためデータを活用した科学的アプローチの重要性が高まっている。
ユーフォリアが開発・提供する「ONE TAP SPORTS」は、日本代表やプロ選手から学生アスリートまで幅広く利用されている。日々のコンディションやトレーニング、ケガの情報を一元管理し可視化することで、アスリートの成長を支援してきた。一方、日本で唯一の国立体育大学である鹿屋体育大学は、2017年から「ONE TAP SPORTS」を全学的に導入し、データ活用を推進してきた実績がある。今回の産学連携は両者のこれまでの取り組みをさらに発展させ、最新のテクノロジーとアカデミズムを融合させることでアスリートのパフォーマンス向上を加速させることを目指すものである。
データサイエンティストと研究者が連携、外傷・障害の分析も
本プロジェクトでは、まず鹿屋体育大学に所属する体育系課外活動団体(チーム)を対象にデータ活用を開始する。具体的には選手が日々入力する主観的な体調データや、スポーツテック機器から得られた客観的なデータを「ONE TAP SPORTS」に蓄積。各チームのニーズに合わせたダッシュボードで可視化し選手のコンディションを詳細に把握する。
今年度からは、外傷や障害に関する調査・分析を新たに開始。ケガの種類や傾向を把握し、予防策の分析や共有を図る。ユーフォリア所属のデータサイエンティストと大学の研究者が連携し蓄積されたコンディションデータとパフォーマンスの相関関係について詳細な分析を進めていく。
AIを活用し、最適なトレーニングプランを自動作成へ
本プロジェクトで蓄積したデータとAIを活用し、将来的には「フィットネス疲労理論」やケガのリスク指標「ACWR(急性・慢性トレーニング負荷比率)」などを組み込んだパフォーマンス予測アルゴリズムを開発する。これにより指導者の経験則だけに頼ることなく個々のアスリートに最適化されたトレーニングプランの自動作成が可能となる。
このアルゴリズムが確立されれば、トレーニング計画の最適化や試合での戦略立案、ケガのリスク管理などを自動で支援できるようになる。指導者の経験値やリテラシー格差の影響を受けずにアスリートが持つ本来のポテンシャルを最大限に引き出すことが可能となり、持続可能な国際競技力向上を目指す「スポーツ立国」の実現と発展に大きく貢献していくだろう。
記事/まるスポ編集部