吏南と比べられる日々。「だったら私は別の道で…」――プロレスを辞める決意の裏にあった、妹としての葛藤
姉妹として、常に比べられる運命。学業との両立に悩み、プロレスから一度離れかけた妃南が、フューチャー・オブ・スターダム王座戴冠で見つけた「本当の自分」。そして今、God’s Eyeの一員として、妃南は“ユニットの柱”を目指す。彼女の言葉からにじむ、10代の決意に迫る。(取材・文/大楽聡詞 文中敬称略)
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“比べられる双子”の苦悩――プロレスを離れた高校時代
――高校3年生の時、学業を理由に一度プロレスから離れていますよね。
妃南:そうですね。羽南と吏南はずっとプロレス一筋という感じでしたが、私は勉強も好き。それに“やりたいことがあったら、ずっとやっていたいタイプ”で、一つに固められない自分がいました。
でも、“プロレスが好きなのに辞めるのは違うのかな”という気持ちもありましたし…。その時期、プロレスで全然良い結果を残せていなかったんですよ。
――羽南選手はシンデレラトーナメントで優勝したり、吏南選手はフューチャーの王座を歴代最長記録で防衛したりと、結果を出していましたね。
妃南:そうなんです。私には本当に何もなかった。だから、2人とは違う道に進んだ方が、「人生として結果を残せるのかな」と考えたのです。
3姉妹でプロレスをしている。特に吏南とは双子で「比べられる人生」なので、ファンの方にも「吏南の方がスゲェーな」とか「吏南の方が、才能があるな」と言われているのを目にしていました。
――一生懸命打ち込んでいるのに、それはショックですね。
妃南:そういった声もあり、家族や親戚、友達にも「吏南の方がすごいと思われているのかな」と…そこをすごく考えすぎちゃって。
それで勉強で頑張って結果を残そうと。吏南は“プロレス”、私は“勉強”と違う道で頑張ったら、イコール(対等)に立てるのかな」と。その時はすごく悩んで、本当にもう辞めようかなと思うくらいでしたね。
フューチャーに挑戦しても吏南からベルトを奪えなかったので、「私はプロレスに向いてないのかな」と思い始めて。そんな時、当時フューチャー王者の(天咲)光由が「妃南とやりたい」と挑戦者に指名されました。
――今年2月24日、地元の栃木大会でフューチャー王座に挑戦しました。
妃南:光由の“その気持ちに応えよう”と。「ここで結果を残せなかったら、本当にプロレスは向いてない。もし負けたら、大学一本で行こう」と決めていました。でも、そこで勝てたので、こうして今もリングに立ち続けています。
