【パラカヌー 今井航一】カヌーは多くの人との縁を繋いでくれる宝物(第3回)

――海の森水上競技場は海水ですよね。合宿先の府中湖は淡水ですが、レースに影響はありましたか?

今井:選手によって意見が分かれますよね。僕は海水だからといって水が掴みにくいと思った事はないです。ただ艇自体は重心が高くなっていたのは感じました。まあ1cmあるかないかですけど。今回僕が出場したのはパドルがシングルブレードのヴァーですので、カヤック(片側ブレード)だともっと安定性が違ってくるかもしれないですね。左右のバランスを取りながら漕いでいるので、重心の高さに意識が向くと力強いパドリングが難しいかもしれません。

――東京2020は海外からの選手が多く来日しました。選手村や会場はいかがでしたか。

今井:パラリンピックの選手村では他競技の選手もいますので、パラカヌーの競技対象の障害以外のいろいろな障害を持つ選手たちに出会ったことはとても衝撃でした。

大会会場ではトップクラスの選手の独特の雰囲気を持っていたり、海外選手はみんな個性的ですね。障害によってそれぞれ動かせる部位が違うので、漕ぎ方一つ見ても同じ人がいない。「この身体でこんな動きをするんだ」と別のクラスの選手のレースを見て刺激を受けました。また母国で自分がパラリンピックに出場する機会は2度とないので特別な思いを抱きながらレースに挑みました。

自分としてはここに至るまでここまでに積み上げてきたものを、完璧に出せれば満点と考えて出場しましたので、自分の全力を出し切れたレースができたので、その点は良かったと思います。

――今井選手がカヌー競技を通して学んだことを教えて下さい。

今井:40代って子供の頃思っていた40代のイメージより身体は動くなぁっていうことですね(苦笑)もちろん20代や30代の選手よりは劣るかもしれませんが。

あとは、身体の動かし方について。片脚がない身体の状態でベストパフォーマンスを出すためにはどうしたら良いのかを考える中で、そもそも健常者のカヌー選手はどういう身体の使い方をしているのか、僕より身体の動きに制限のある人たちはどんな身体の使い方をしているのかをすごく考えます。このような動作観察することで心理的なことも含め、いろんなものが見えてくるので、あらためて観察することの大切さを学びましたね。

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