昨年の暴力事件から全寮制が廃止となる広陵高校(写真はイメージ)
広島・広陵高校は28日に、野球部内で発生した暴力事案について第三者委員会の報告書を公表した。報告書では上級生による下級生への集団的な暴力行為を認定し、「いじめに該当する重大な人権侵害」と結論付けた。
【広陵高野球部】「加害」生徒が被害者親を名誉毀損で告訴――SNS投稿めぐる異例の展開
問題となったのは昨年1月に発生した事案。寮内で禁止されていたカップ麺を食べた下級生に対し、複数の上級生が暴力を加えたとされる。第三者委員会は被害生徒に強い恐怖と精神的苦痛を与えたと指摘し、「集団的な暴力行為」であったと認定した。
さらに今回の調査では、暴力行為そのものだけではなく、野球部を取り巻く組織風土にも厳しい指摘がなされた。
第三者委員会は、野球部内に「閉鎖的・排他的で同調圧力の強い環境」が存在していたと分析。被害を受けた生徒が声を上げにくく、問題が表面化しづらい構造があったとした。名門校ゆえの強い規律や上下関係が、結果として不健全な環境を生み出していた可能性も浮かび上がった。
また報告書では、当時の中井哲之監督ら指導者側の対応についても言及。「高野連への報告がチームの不利益につながる」といった趣旨の発言があったと認定され、被害生徒の転校につながる一因になったと指摘されている。
この事案は当初公表されないまま推移していたが、広陵高が夏の甲子園出場を決めた後にSNS上で被害者側とみられる投稿が拡散。学校側や高野連の対応を巡り大きな議論を呼んだ。
当初高野連は夏の甲子園出場に変更はないとして容認し、初戦を勝ち上がっていた。しかし日に日に加熱する世論の猛反発も影響し、大会途中で不祥事による辞退という史上初の事例へと発展した。
その後、学校は野球部の指導体制見直しに着手。長年チームを率いてきた中井監督と、息子である中井惇一部長の退任が発表された。中井前監督は1990年に27歳で監督へ就任し、センバツ優勝2度をはじめ全国屈指の名門の名を守ってきていた。しかし親子で築き上げてきた古き習慣は、暴力問題によって大きな転換を迫られることとなっていた。
今回の報告を踏まえて学校側は、長年続いてきた全寮制の廃止も決定した。これまで強豪校の伝統として続いてきた寮生活の在り方そのものにもメスを入れる形となった。
広陵高といえば、全国屈指の伝統校として数多くの甲子園出場を重ね、プロ野球選手も多数輩出してきた。しかし今回の問題は勝利や伝統を追い求めるだけではなく、選手一人ひとりの人権や成長をどう守るかという高校野球の課題を改めて浮き彫りにした。
名門校がどのように信頼を取り戻し、球児の成長に寄与していくのか。その道のりは果てしなく長いものになるだろう。
記事/まるスポ編集部
