32年ぶりに日本開催となるアジア競技大会(9月・愛知)で金メダル獲得を狙う長洲百香(写真/本人提供)
<前編はコチラ>
感覚だけで漕いでいた少女は、いかにして「勝つためのロジック」を手に入れたのか。ワールドカップで日本人初となる銀メダル獲得という快挙を経て、長洲百香(21)が次に向かったのは大学のゼミでの「戦術論」の研究だった。
自らの競技を客観的に分析し、学問を武器へと変える彼女。その視線の先にあるのは、32年ぶりに日本で開催されるアジア競技大会、そして2028年ロサンゼルス五輪での頂点。カヌー界の新時代を切り拓く若き長洲の飽くなき挑戦の行方を追った。(取材・記事/大楽聡詞)
◼️大学で学ぶ「戦術論」を競技のスパイスに
――昨年のワールドカップでは「カヤッククロス」で銀メダルを獲得されました。その時も「感覚」で漕いでいたのですか?
長洲:それ以前の大会までは自分の感覚だけでレースをしていましたが、昨年のワールドカップからはコーチとしっかり「戦術」を組み立てるようになりました。
それがピタッとハマり、「戦術ってこんなに面白いんだ!」と。新しい扉が開いた感覚でしたね。
――その興味が高じて、大学でも専門的に学んでいると伺いました。
長洲:日本大学スポーツ科学部のゼミで「戦術論」を研究しています。実はカヤッククロスに関する論文って、世界中を探してもほとんどないんです。だったら「自分で作ってしまおう」と思って。
――ゼミの先生も、かつてドイツでサッカーの指導に携わっていた「戦術のプロ」だそうですね。サッカーの三笘薫選手も、大学時代に自身のドリブルを研究し、論文にまとめたことが大きな話題になりました。
長洲:そうなんです!サッカーは戦術がすごく発展しているじゃないですか。三笘選手のように、緻密な分析をカヌーに持ち込めば、日本人が世界で勝つための大きな武器になると思います。
だから大学が大好きなんです!遠征で行けない時期もありますが、授業で学んだ組み立て方を実際のレースで試すのが楽しくて。今の私にとって、戦術は最強の「武器」を手に入れたようなワクワク感があります。
